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徒然 然

アニメ批評など。

『傷物語〈Ⅱ 熱血篇〉』感想

 観たからには何かしら残しておこう,といった程度でほぼほぼ日記みたいなものです。『傷物語〈Ⅰ 鉄血篇〉』の感想は下記事。

 以下,ネタバレが多分に含まれていますのでご注意ください。

 

 「鉄血篇」は良くも悪くもむせ返るような尾石ワールドが広がっていたわけですが,「熱血篇」ではそれがいくぶん抑えられていました。「鉄血篇」と「熱血編」,どちらも同じ『傷物語』という作品の枠内ではあるのですが,かなり毛色の異なった作品になった印象があります。

 「鉄血篇」では演出が物語に先行していました。64分という枠で,ほぼ「阿良々木暦キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードとの邂逅」というシークエンスのみに集中して濃密に描き切っていました。原作ではpp.10-101の約92ページ。

 一方で,「熱血篇」は物語が演出に先行していたように感じました。対ドラマツルギーから対ギロチンカッターまで。原作でpp.102-227の約126ページ。

 劇場版では阿良々木のモノローグがセリフとしてはすべてカットされているわけですから,単純に比較することはできませんが,それでもバトルが3本挿入される「熱血篇」のほうが作劇的により"重い"のは間違いないと言っていいのではないかと思います。

 この両者のストーリーに割くべき比重の差が,そのまま劇中における諸種の表現の差に結びついているような気がします。

 

 むろん,「演出が抑えられていた」といえど,それはあくまで「鉄血篇」と比較対照したときの話であって,1本のアニメ映画として観れば十分すぎるほど濃厚な演出でした。

 とくに羽川との会話なんかはずいぶんと冗長だなと感じるくらいでしたが,それゆえにバトルシーンでの躍動感だとか目まぐるしさが増長されているようでしたし,ラストのギロチンカッター戦なんかはその集大成と言うべきもので,圧倒的な物量感に鳥肌が止まりませんでした。

 こうした緩急のある展開だからこそ,「熱血篇」はよりエンタメ性に富んだ,より"見やすい"作品として仕上がっているのではないかと思います。

 

 あと,「熱血篇」ではキスショットと羽川が「鉄血篇」にも増してかわいらしかったです。"成長"したキスショットは妖艶でもありました。

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 ただやっぱり,終劇としては尻切れ感が大いにあって,せっかく高揚したところに冷水を浴びせられてしまうのが残念でなりません。せめてパッケージとしては1本で売りだしてくれていたらな……。

 

 「冷血篇」は2017年1月6日。年をまたいでしまいました。気長に待ちましょう。